朝なぎ 水上不二
てんぐさ、
お籠にかかへて、
月夜に浜から来たのは、
あの子だ、
白いよ、帽子が。
百合だな、
この花おくれと、
よあけにはだしで来たのも、
あの子だ、
ボートを漕いでる。
ちらちら、
松から日がさす、
素焼のちひさい壺ごと、
かれひが、
生かして売られる。
【感想】
月の明かりに照らされて、籠いっぱいの天草を抱えた子がやってくる。
夜明けの海岸、百合の花をおくれといったあの子がボートを漕いでいる。
お日さまが松林からさし込む。朝市だろうか、素焼きの壺で生きているカレイが売られている。
まだ暗いうちから天草取りに出かけていた子。主人公は、花を商っているのだろうか。隣で、魚を商っている者がいるのか。松林に囲まれた海岸の朝市だろうか。
風もなく穏やかな波間にボートを漕いでいるあの子の姿がある。網にかかったカレイであろうか。壺の中で生かされて売られている。
同じ場所であるが、「月夜」「夜明け」「日がさす」と時間の経過がはっきりと見える。営みが見える。「あの子」は少年か少女か。
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