講談社の絵本ゴールド版70 いわしをみつけたぽろとかろ

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1961(昭和36)年 
いわしをみつけた ぽろとかろ   水上不二

①よがあけました。
こいぬの ぽろと かろは、おおよろこびで おもてへ とびだしました。
ぽんぽんと、すなの うえを かけわりました。
ころころと もつれあいました。ぽろが、ぱっと かけだしました。
すると うみの そばに、いわしが一ぴき、おちて いました。
 ぽろが みつけて くわえました。
②「ぼくにも、はんぶんおくれよ。」
 かろが、うらやましそうに いいました。
 「だめ だめ、ぼくが みつけたんだもの。」
「くれないって いうの。 ぼくだって、いつだか、さんまを みつけた とき、はんぶん わけて やったじゃ ないか。」
③そうです。いつだか、かろが さんまを みつけた とき、ぽろに はんぶん わけて あげたのです。
 「じゃ、そこらを さがして みよう。
もう一びきぐらい おちて いるよ、きっと。どこかで、においが するもの。」
 ひろった いわしを そこに おいて、ぽろと かろは、においを かいで いきました。
④すると、やっぱりおちて いました。
 くろい いわの かげに、いめしが 一ぴき、
ぎんいろに ひかっていました。
「もって いって、一ぴきずつ たべようよ。」
 かろが くわえて、もとの ところへ いきました。
⑤すると、まっくろな ねこが、おいしそうに、いわしを たべていました。
 のらねこの たまです。たまは、としを とって ねずみをとらなく なったので、どこからか つれて こられて、すてられたのです。いつも、おなかを すかせて います。かわいそうな すてねこです。
⑥「たまだよ。これも あげようかい。」
かろが、きのどくそうに いいました。
 「うん、あげようよ、あげようよ。」
ぽろも、こごえで いいました。
ひろって きた いわしを そこへ おいて、ぽろと うれしそうに かけだしました。

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この記事を書いた人

詩と童話の世界に魅了され、水上不二の作品をテーマにしたブログを運営しています。子どもの頃に読んだ彼の童話が心に深く刻まれ、それ以来、彼の詩や物語に込められたメッセージを探求し続けています。

文学を学ぶために大学で日本文学を専攻し、卒業後は国語教師として勤務。その後、自分自身の言葉で水上不二の世界を語りたいという思いから、ブログを立ち上げました。

趣味は読書、美術館巡り、そして詩の朗読。特に、水上不二の詩を声に出して読むと、彼の言葉が心に染み渡る瞬間があり、それが私の人生の喜びの一つです。

このブログを通して、水上不二の作品を通じた感動や発見を皆さんと分かち合い、詩と童話の世界を広げていけたらと願っています。

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