1961(昭和36)年
いわしをみつけた ぽろとかろ 水上不二
①よがあけました。
こいぬの ぽろと かろは、おおよろこびで おもてへ とびだしました。
ぽんぽんと、すなの うえを かけわりました。
ころころと もつれあいました。ぽろが、ぱっと かけだしました。
すると うみの そばに、いわしが一ぴき、おちて いました。
ぽろが みつけて くわえました。
②「ぼくにも、はんぶんおくれよ。」
かろが、うらやましそうに いいました。
「だめ だめ、ぼくが みつけたんだもの。」
「くれないって いうの。 ぼくだって、いつだか、さんまを みつけた とき、はんぶん わけて やったじゃ ないか。」
③そうです。いつだか、かろが さんまを みつけた とき、ぽろに はんぶん わけて あげたのです。
「じゃ、そこらを さがして みよう。
もう一びきぐらい おちて いるよ、きっと。どこかで、においが するもの。」
ひろった いわしを そこに おいて、ぽろと かろは、においを かいで いきました。
④すると、やっぱりおちて いました。
くろい いわの かげに、いめしが 一ぴき、
ぎんいろに ひかっていました。
「もって いって、一ぴきずつ たべようよ。」
かろが くわえて、もとの ところへ いきました。
⑤すると、まっくろな ねこが、おいしそうに、いわしを たべていました。
のらねこの たまです。たまは、としを とって ねずみをとらなく なったので、どこからか つれて こられて、すてられたのです。いつも、おなかを すかせて います。かわいそうな すてねこです。
⑥「たまだよ。これも あげようかい。」
かろが、きのどくそうに いいました。
「うん、あげようよ、あげようよ。」
ぽろも、こごえで いいました。
ひろって きた いわしを そこへ おいて、ぽろと うれしそうに かけだしました。
コメント