講談社の絵本ゴールド版80 なおこちゃんとすずめ 

1962(昭和37)年1月号下
 なおこちゃんとすずめ  水上不二

 ちゆんくるちゆん、ちゆんくる ちゅん。

 なおこちゃんは、おとうさんにかって いただいた とりかごを まどの ききに つるして、すずめを かって いました。おとなたちが、きれいな かなりやや、かわいい いんこを かって いるように。
 その すずめは、このあいだ、にわさきに おちて、とべないでいたのです。どう したのか、はねの したに ちいさい きずが ありました。
「まあ、かわいそうに。」
 なおこちゃんは、おかあきんに くすりをいただいて、つけて やりました。
 なおこちゃんは、ぱんの かけらや、ちいさい むしを とって きて やりました。
 ある ひ、なおこちゃんが ごはんをたべて いると、すずめが、ちちっ ちちっと、はげしく なきました。はしを おいて いそいで いって みると、どこかの まっくろな ねこが、すずめを ねらって いるのでした。なおこちゃんは ぴっくりしましたが、こわいのも わすれて、しいっと さけんで とんで いきました。
 ねこは、おどろいて、どこかへ にげて しまいました。
 すずめは、一にち一にちと げんきに なって いきました。きずは すっかり なおって、どこへでも とんで いけるように なりました。
もう だいじょうぶです。なおこちゃんは、すずめを かごから だして やりました。すずめは、うれしそうに そらへ とんで いきました。
 が、しばらく すると、また かえって きて、とりかごの うえに  とまって  いました。
 ちゅんくるちゅん、ちゅんくるちゅん。
 なおこちゃんの へやの まどに、からのとりかごが さがって います。えさいれに
は、えさが いっぱい はいって います。いまに、すずめが、ともだちを つれて、
えさを たべに くるでしょう。
 ちゆんくるちゅん、ちゅんくるちゅん。
 なおこちゃんは、せんたくの すんだ おかあきんと いっしょに、そらを ながめて、すずめの くるのを まって います。
              (おわり)

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この記事を書いた人

詩と童話の世界に魅了され、水上不二の作品をテーマにしたブログを運営しています。子どもの頃に読んだ彼の童話が心に深く刻まれ、それ以来、彼の詩や物語に込められたメッセージを探求し続けています。

文学を学ぶために大学で日本文学を専攻し、卒業後は国語教師として勤務。その後、自分自身の言葉で水上不二の世界を語りたいという思いから、ブログを立ち上げました。

趣味は読書、美術館巡り、そして詩の朗読。特に、水上不二の詩を声に出して読むと、彼の言葉が心に染み渡る瞬間があり、それが私の人生の喜びの一つです。

このブログを通して、水上不二の作品を通じた感動や発見を皆さんと分かち合い、詩と童話の世界を広げていけたらと願っています。

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