1962(昭和37)年7月号上
こいぬとにじ 水上不二
こいぬが、のはらで あそんで いました。
ばらばらと あめが ふってきました。こいぬは、まつの きのしたへ いって、いしの そばに さいて いる あかい はなを みて いました。
あめは、いつの まにか やんで、むこうの そらに、きれいな にじが たちました。
あか・だいだい・き・みどり・あお・あい・むらさきの、ななつのいろの たいこばしです。
「にじだよ、にじだよ。」
ことりが もりで うたいました。
「わたりましょう、わたりましょう。」
ちょうちょうが とんで いきました。
「わたしも いってみようかしら。」
でも、こいぬは、なんだか しんぱいでした。おかあさんに だまって いっては わるいと おもいました。じっと たった まま、にじを みて いました。
すると、にじは、しずかに きえて いきました。ふしぎです。きえて みえなく なりました。
こいぬは、きえない うちに わたって いけば よかったなと おもいました。ことりや ちょうちょうは、あの はしを わたっていって、おまつりか なにか、おもしろい ものを みて いるだろうとおもいました。
でも、こいぬは、あんなに、うつくしい ものを みた ことが うれしくて なりませんでした。
とっとと おうちへ かけで いきました。そして、まどの ところから、おおきな こえで いいました。
「おかあさん、おかあさん、うつくしい ものを みましたよ。たいこばし、たいこばし、とても きれいな たいこばしを はじめてみましたよ。」
(おわり)
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