1962(昭和37)年11月号上
みんなのりんご 水上不二
ふんらすの くにの しずかな むらです。みちばたに、りんごの なみきが つづいて います。どの きにも、あかくて おおきな りんごが、たくさん なって います。
おいしそうに ひかって います。
でも、りんごは むらの ものですから、こどもも、えだなど ゆすりません。むしを とったり、かみぶくろを かぶせたり します。りんごほ みんなの ものですから、おちて いると、ひろって、ねもとに ならべて おきます。だれも、だまって もって いったりは しません。
そのうちに、やくぼから かかりの ひとが きて、りんごを あつめて いきます。えだから もいだのといっしょに、くるまに つんで、ころころと ひいて いきます。りんごは、むらの こうばで じゃむに します。
「はい、あんぬちゃん、じやむですよ。」
「はい、ぽーるくん、じやむですよ。」
むらの いえいえに、おいしい じゃむを くぼります。
「ありがとう」
「ありがとう」
どこの いえでも おおよろこびです。
「おいしい じゃむだ。」
「いい、じゃむだ。」
むらの ひとは、みんな にこにこです。
「ぱんに つけよう」
「おかしを つくろう」
「まちの おじさんにも、
とどけて あげよう」
ふらんすの くにの しずかな むらは、じやむの においで いっぱいです。
まもなく、よるに なりました。しずかな むらの うえに、あかい おつきさまが のぼります。むらの みんなの りんごのように、せかいで ひとつの りんごのように、まるくて おおきな おつきさまです。
「かとりーぬちゃん、こんばんは。」
「あんりーくん、こんばんは。」
おつきさまは、そう よび かけて いるようでした。
(おわり)
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