1962(昭和37)年11月号下
ふしぎなてーぶるかけ 水上不二
ぶーつは、のはらの なかの ちいさな いえに、おかあさんと ふたりで すんでいました。
びゅう、ぴゅうと きたかぜの ふく、さむい ひでした。
「ぶーつや。ものおきへ いって、こむぎこを も って きておく れ。」
ブーツは、ぎの はちを もって、ものおきへ いきました。
ふくろの こむぎこを はちに うつした とき、きたかぜが ぴゅうと ふいてきて、こなをふきとばしました。ぶーつとおかあさんはこまってしまいました。たべものは これしか なかったので
「よし きたかぜの ところへ いって、こなを かえして もらって くる。」
ぶーつは おこって、きたかぜの ところへ でかけました。
「きたかぜさん、ふきとばした こなを かえして ください。ぼくの いえでは、たべものが なくなって、こまって いるんです。」
「それは」 わるかったね。では、こむぎこのかわりに、この てーぶるかけを あげよう。これを ひろげて、ごちそうを だせと いえば、ごちそうが たくさん でて くるよ。」
ぶーつは、その てーぶるかけを もらってかえりました。とちゅうで ひが くれました。
やどやに とまった ぶーつは、さっそく てーぶるかけを ひろげて、いいました。「ごちそうを だせ。」
みる まに、おいしい ごちそうが たくさん でて きました。
それを みて いた やどやの しゅじんは、よなかに そっと、ほかの てーぶるかけと すりかえました。それとは しらない ぶーつは、いえへ かえりました。
「おかあさん、きたかぜさんから、すてきな ものを もらって きましたよ。」
さっそく てーぶるかけを ひろげて、
「ごちそうを だせ。」
と さけびましたが、なんにも でて きません。なんど やっても おなじです。
ぶーつは、また、きたかぜの ところへ いきました。
「きたかぜさん、あの てーぶるかけは だめに なって しまいました。」
「それでは、きんかを だす ひつじを あげよう。」
「ありがとう、きたかぜさん。」
かえる とちゅう、また、まえの やどやに とまりました。にわさきに ひつじを つないで、
「おかねを だせ。」
と いうと、きんかが たくさん でて きました。やどやの しゅじんは それをみて、ほかの ひつじと すりかえました。
すりかえられたとは しらない ぶーつは、いえへ かえって、おかあさんの まえで なんども ためしましたが、なんにも でて きません。ぶーつは、また きたかぜの ところへ いきました。
「きたかぜさん、あの ひつじも だめです。」
「それは こまったな。こんどは、このつえを もって おいでつえよ、たたけと いうと、なんでも たたいて くれるよ。」
ぶーつは、かえる とちゅうで、また まえの やどやに とまりました。でも、この やどやが あやしいと おもったので、べっどに はいっても、ねないで いました。よなかに なると、やどやの しゅじんが はいってきました。そして、つえを とろうと しました。その とき、
「つえよ、たたけ。」
と ぶーつが さけびました。つえは しゅじんを びしびしと たたきます。いくら にげても。おいかけて たたきつづけます。
「いたい、いたい。たすけて くれ。てーぶるかけも ひつじも けすから、ゆるして ください。」
と あやまりました。そこで、ぶーつは さけびました。
「つえよ、やめろ。」
つえは、たたくのを やめました。しゅじんは、じぶんの わるかったのに きが つき、ぶーつに あやまって、てーぶるかけと ひつじを かえしました。
それから、ぶーつと おかあさんは、しあわせな ひを おくりました。 (おわり)
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