昆虫列車 第1集 薔薇の木 

薔薇の木 水上不二

薔薇の木、
とても咲いたな。
ベルだよ、
りんろん揺れてる。

薔薇の木、
あれはお月夜。
蜂の巣、
帽子(しやつぽ)にとったな。

薔薇の木、
神父さまだよ。
とげなど、
やさしく撫でてる。

薔薇の木、
いまに散るだろ。
はなびら、
香炉に焚かうよ。

薔薇の木、
とても咲いたな。
誰だろ、
オルガン弾いてる。

【感想】

 「薔薇の木」は「麝香あげは」の続きのようだ。薔薇の垣根に囲まれた教会。ベルのついた教会の扉。教会に響くオルガンの音。月明かり、神父様が薔薇の花を撫でながら耳を澄ます。

 「薔薇の木」の繰り返し。今は満開、いずれは散ってしまう。でも散った花びらは、教会の香炉で焚く。

 「花が散る」で思い出されるのは、「同期の桜」。戦時中の流行歌です。「『同期の桜』歌詞の原詩とされる、西条八十「二輪の桜」は、少女向少女倶楽部」昭和十三年(一九三八年)二月号に掲載された詩。一九三七年(昭和十二年)七月七日、盧溝橋事件を発端とする第二次上海事変が発生。この事変で恋人を失った少女のために、次のような「二輪の桜」が雑誌「少女倶楽部」に掲載された。」(HP世界民謡・童謡より)

 「昆虫列車」が昭和十二年三月創刊なので、不二が影響されたとは思わないが、「花」とか「散る」には、悲しい思いを感じる。

 四行五連での形式は、あまり見ることがない。また、音数については、ほぼ四八の偶数だ。五七に対する冒険だったのかもしれない。内容は、一~五連は現在、過去、現在、未来、現在という構成になっている。「麝香あげは」はこのようにみると、現在、過去、現在。「薔薇の木」では未来が加えられたと思う。ちょっと悲しい未来だ。

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昆虫列車本部昆虫列車1爵香あげは
昆虫列車本部昆虫列車1蜂のお酒
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昆虫列車本部昆虫列車1薔薇の木
昆虫列車本部昆虫列車2植物園のベル
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昆虫列車本部昆虫列車1812 スサノヲの命(雲)
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この記事を書いた人

詩と童話の世界に魅了され、水上不二の作品をテーマにしたブログを運営しています。子どもの頃に読んだ彼の童話が心に深く刻まれ、それ以来、彼の詩や物語に込められたメッセージを探求し続けています。

文学を学ぶために大学で日本文学を専攻し、卒業後は国語教師として勤務。その後、自分自身の言葉で水上不二の世界を語りたいという思いから、ブログを立ち上げました。

趣味は読書、美術館巡り、そして詩の朗読。特に、水上不二の詩を声に出して読むと、彼の言葉が心に染み渡る瞬間があり、それが私の人生の喜びの一つです。

このブログを通して、水上不二の作品を通じた感動や発見を皆さんと分かち合い、詩と童話の世界を広げていけたらと願っています。

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