葵 水上不二
雌蕋(おしべ)よ,
雄蕋(めしべ)よ,
お日さまにぶいよ。
つゆばれ,
葵が咲いてる。
雌蕋(おしべ)よ,
雄蕋(めしべ)よ,
みるくの息だよ。
ちろちろ,
とかげが,
香(にほ)ひを吐いてる。
雌蕋(おしべ)よ,
雄蕋(めしべ)よ,
つめたい露だよ。
はばたけ,
しろい蛾
花粉も濡れてる。
雌蕋(おしべ)よ,
雄蕋(しめべ)よ,
お日さま明かるよ。
明かるよ,
つゆばれ,
葵が咲いてる。
【感想】
詩の感想
解釈:身近な対象「葵」を題材に謡っている。梅雨の晴れ間,雲が切れて太陽が出てきた。「葵」の花をじっと観察している。とかげが出てくる。しろい蛾(蝶だと思う)が飛んでいる。
「みるくの息だよ」:花びらをとると粘着性のある汁が出る。とかげが「ちろちろ」舌を出してなめているような様子か。
「しろい蛾」:お日さまが出ている昼間だから,蛾より蝶だと思う。「麝香あげは」は黒なので,「紫の葵」には白が映えるのでしょう。ここは,4音にそろえたのではないかと思う。蝶が蜜を吸っている様子ではないか。花粉が濡れているので,羽を羽ばたかせて乾かしなさい。命の伝承を示唆しているのでしょう。
一連と四連で時間の経過が分かる。空をおおっていた雲が次第に切れてお日さまが出る。明るい紫色がくっきりと鮮やかに見えてくる。その花びらに包まれた雌しべと雄しべにお日さまが出てきたよと話しかける。しっかり,真っ直ぐ,お日さまに向かって伸びていくんだよ。五感を働かせて梅雨の時期のほんの一時の晴れ間を楽しんでいる様子が伺える。(佐々成)
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