昆虫列車第1集 P2 昆虫列車
はしれ、はしれよ、昆虫列車
けふの日和に、季節の風に。
ベルを鳴らして、お旗をあげて、
はしれ、はしれよ、昆虫列車、
遠いかすみへ、スバルの星へ。
草のトンネル、もひとつくぐりや、
雲が立ちましよ、虹の輪こえて。
はしれ、はしれよ、昆虫列車、
あすの地平が羽搏きしてる。
【感想】
◎昆虫列車(から連想される語句、イメージ)力強い甲虫カブトムシ(水上不二) カマキリ(まど・みちを)
アリ(真田亀久代) セミ(米山愛紫) など
新たに児童文学を志す自分たちの姿を重ね合わせていると見える。
◎スバル
明治四十二年に石川啄木や北原白秋が創刊した雑誌を掛けていると思う。
白秋を師と仰いでいるので、作品作りの目標、終着駅としていたともいえる。
◎蒔いて行くのはお花の種子か
新しい芽吹きへの期待、子供たちの心への期待
◎草のトンネル、もひとつくぐりや
深い草藪という障害を、挑戦しながら克服していこうとする強い意志を表現していると思う。
◎虹の輪こえて
雨上がりさわやかさをイメージし、色鮮やか、成功、喜び、新しい世界を表現していると思う。
◎あすの地平が羽搏きしてる。
地平―昭和五年「私の内在」で草木は土の噴出だと表現している。愛らしい草木は地平にあふれ(炎と百合百合は白く澄んで地平にひらくとあるように、これから訪れるであろう世界に対する大いなる期待にあふれているように見える。
平成二十七年(二〇一五) 水上忠夫氏の「水上不二雜記~みどりの真珠の祈り」中に、平成十六年「生誕百周年記念事業開催 詩人富田博さん不二を語る」の講演が記述されている。その中で富田氏は昆虫列車について次のように分析している。
「自分は昆虫列車の機関手です。昆虫列車にいっぱい乗っている昆虫たちは、童謡を作っている仲間です。仲間と一緒に、この「昆虫列車」を走らせていこうというテーマの作品です。みんなを昆虫にたとえている作品ですが、「今日の季節の風に」と自然を詠い、「蒔いて行くのはお花の種子か」と優しい心を示し、「遠いかすみへ、スバルの星へ」と星の世界にまで水上さんの言葉は飛んでいっています。そしてまた、目は下に戻ってきて「草のトンネル、も一つくぐりゃ」となり、「雲が立ち、虹の輪をこえて」行こう、「昆虫列車がんばれ!」と言っています。これは、彼の悲願でありましょう、それは悲しい願いでしょう。この「昆虫列車」は今どこをはしっているのか、これはみなさんがたで見つけていただきたいなと思います。」
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