講談社の絵本ゴールド版113 くもになったぱん

1963(昭和38)年4月号下
 くもになったぱん  水上不二

①めりーさんは、ぱんを つくりました。
おなべに いれて ふくらませました。

②ぱんは。ずんずん おおきく なっていきました。

③めりーさんは、てかごを さげて。いちばへ かいものに でかけました。

④「たまねぎと にんじんを くださいな。」
 やおやで、たまねぎと にんじんを かいました。

⑤「ばたーと そーせーじを くださいな。」
 にくやで、ばたーと そーせーじを かいました。

⑥「うわぎに つける、あかい ぼたんを くださいな。」
 こまものやで、あかい ぼたんを かいました。

⑦その あいだに、ぱんは、ふわふわと おなべの なかから とびだしました。
「おそらへ いこう。」
「おそらへ いこう。」

⑧めりーさんが、いちばから かえって みますと、
「おや、おや、おや。」
 おなべの なかは からっぽでした。

⑨おなべから とびだした ぱんは、そらへ のぼって、しろい ふとっちょぐもに なって いました。

⑩「あの ぱんを、だれが たべるのかしら。」
 めりーさんは、まどから そらを ながめて いました。

⑪くもに なった ぱんは、ひぐれの そらを しずかに ながれて いきます。
 めりーさんは、また ぱんを つくりはじめました。 (おわり)

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この記事を書いた人

詩と童話の世界に魅了され、水上不二の作品をテーマにしたブログを運営しています。子どもの頃に読んだ彼の童話が心に深く刻まれ、それ以来、彼の詩や物語に込められたメッセージを探求し続けています。

文学を学ぶために大学で日本文学を専攻し、卒業後は国語教師として勤務。その後、自分自身の言葉で水上不二の世界を語りたいという思いから、ブログを立ち上げました。

趣味は読書、美術館巡り、そして詩の朗読。特に、水上不二の詩を声に出して読むと、彼の言葉が心に染み渡る瞬間があり、それが私の人生の喜びの一つです。

このブログを通して、水上不二の作品を通じた感動や発見を皆さんと分かち合い、詩と童話の世界を広げていけたらと願っています。

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