1963(昭和38)年4月号下
くもになったぱん 水上不二
①めりーさんは、ぱんを つくりました。
おなべに いれて ふくらませました。
②ぱんは。ずんずん おおきく なっていきました。
③めりーさんは、てかごを さげて。いちばへ かいものに でかけました。
④「たまねぎと にんじんを くださいな。」
やおやで、たまねぎと にんじんを かいました。
⑤「ばたーと そーせーじを くださいな。」
にくやで、ばたーと そーせーじを かいました。
⑥「うわぎに つける、あかい ぼたんを くださいな。」
こまものやで、あかい ぼたんを かいました。
⑦その あいだに、ぱんは、ふわふわと おなべの なかから とびだしました。
「おそらへ いこう。」
「おそらへ いこう。」
⑧めりーさんが、いちばから かえって みますと、
「おや、おや、おや。」
おなべの なかは からっぽでした。
⑨おなべから とびだした ぱんは、そらへ のぼって、しろい ふとっちょぐもに なって いました。
⑩「あの ぱんを、だれが たべるのかしら。」
めりーさんは、まどから そらを ながめて いました。
⑪くもに なった ぱんは、ひぐれの そらを しずかに ながれて いきます。
めりーさんは、また ぱんを つくりはじめました。 (おわり)
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