1962(昭和37)年1月号下
なおこちゃんとすずめ 水上不二
ちゆんくるちゆん、ちゆんくる ちゅん。
なおこちゃんは、おとうさんにかって いただいた とりかごを まどの ききに つるして、すずめを かって いました。おとなたちが、きれいな かなりやや、かわいい いんこを かって いるように。
その すずめは、このあいだ、にわさきに おちて、とべないでいたのです。どう したのか、はねの したに ちいさい きずが ありました。
「まあ、かわいそうに。」
なおこちゃんは、おかあきんに くすりをいただいて、つけて やりました。
なおこちゃんは、ぱんの かけらや、ちいさい むしを とって きて やりました。
ある ひ、なおこちゃんが ごはんをたべて いると、すずめが、ちちっ ちちっと、はげしく なきました。はしを おいて いそいで いって みると、どこかの まっくろな ねこが、すずめを ねらって いるのでした。なおこちゃんは ぴっくりしましたが、こわいのも わすれて、しいっと さけんで とんで いきました。
ねこは、おどろいて、どこかへ にげて しまいました。
すずめは、一にち一にちと げんきに なって いきました。きずは すっかり なおって、どこへでも とんで いけるように なりました。
もう だいじょうぶです。なおこちゃんは、すずめを かごから だして やりました。すずめは、うれしそうに そらへ とんで いきました。
が、しばらく すると、また かえって きて、とりかごの うえに とまって いました。
ちゅんくるちゅん、ちゅんくるちゅん。
なおこちゃんの へやの まどに、からのとりかごが さがって います。えさいれに
は、えさが いっぱい はいって います。いまに、すずめが、ともだちを つれて、
えさを たべに くるでしょう。
ちゆんくるちゅん、ちゅんくるちゅん。
なおこちゃんは、せんたくの すんだ おかあきんと いっしょに、そらを ながめて、すずめの くるのを まって います。
(おわり)
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