1962(昭和37)年2月号下
ひげのおじいさんとつぼ 水上不二
むかし、ある まちに、とても おこりんぼうで、けんかの すきな こどもが いました。
きょうも、ともだちと けんかをして、おとうさんに しかられました。
「そんなに けんかの すきな こは、この うちからでて いきなさい。」
と、おもてへ だされて しまいました。
よるに なって、あかるい おつきさまが でました。ひとりで おつきさまを みて いると、かなしくなりました。
「おとうさん、」ごめんなさい。
「ぼくがわるかったよ。」
なみだが、ぼろぼろと こぼれて きました。
すると、どこからか、しろい ひげの おじいさんがきて、
「こどもよ、わたしの いう ことを ききなきい。」
と いいました。そして、じめんを とんと ふむと、おおきな つぼがでて きました。
「あした、このつぼを せおって、まちを あるきなさい。だれが なんと いっても、けっして おこっては いけないよ。けんかを しては いけないよ。」
「はい。」
あくるひ、こどもは、おおきな つぼを せおって、まちへ いきました。つぼを せおったまま、まちじゅうを あるきました。それを みて、まちの こどもたちは わらいました。
「おおきな つぼが あるいて くるよ」
「あっはっは。おかしいな。」
みんなが、こどもを ゆびさして わらいました。こどもは、くやしくて たまりません。そのうえ、つぼは、だんだん おもく なって きました。それでも、こどもは、じっと がまんしながら、まちを あるきました。
よるに なりました。ゆうべの おじいさんが、どこからか あらわれました。
「こどもよ、よく がまんした。そのこころを いつまでも なく しては いけないよ。」
そう いって、つぼを ふりました。
すると、たくさんの きんかが でてきました。
「これを もって、おとうさんの ところへかえりなきい。おかあさんも よろこぶだろう。」
こどもは、いつの まにか、がまんづよくて、すなおな よいこに なって いました。きんかの はいったつぼを せおって、にこにこしながら、うちへかえって いきました。
(おわり)
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