1962(昭和37)年6月号上
いしやのぴえーとろ 水上不二
いしやの ぴえーとろは、はたらいても はたらいても、いつも びんぼうでした。そこで、ぴえーとろは、かみきまに おねがいしました。
「わたしに、きんや ぎんの いっばい ついた がいとうを ください。」
「よし、がいとうを やろう。」
ぴえーとろは、がいとうを いただきました。」
いしやを やめて、がいとうに ついて いる きんや ぎんを うって、まいにち たのしくくらして いました。
ところが、ある ひ、まちを あるいていると、うまに のった おとこに であいました。
「そうだ。かねもちに うまが ないなんておかしいや。かみさま、わたしに うまを ください。」
「よし、うまを やろう。」
ぴえーとろは、うまを いただきました。
まいにち うまを のりまわして、いちばへ かいものに いったり、ともだちの いえを たずねたり しました。
「もっと とおくの、にぎやかな まちへ いこう。」
あつい ひでした。
おひきまが かんかん てりつけて、ぴえーとろは あせで ぴっしょりでした。とうとう うまが たおれてしまいました。
「ああ、なんと つよい おひさまだろう。かみさま、わたしを おひさまに してください。」
「よし、おひきまに して やろう。」
ぴえーとろは、おひさまに なりました。あさから ばんまで、つよい ひかりを だしました。
くさも きも さくもつも、かれそうになりました。ひとや けものも、あまりのあつさに たおれました。
「ああ、あめが ふれば いいなあ。」
みんなが、そらを をがめて いいました。ある ひ、くもが とおって、おひさまを かくして しまいました。そらが くもって きて、あめが ふりだしました。
くさも きも さくもつも、みんな いきかえったように よろこびました。
「そうだ。わたしが くもだったら、どんなにいいだろう。かみさまわたしを くもに して ください。」
「よし、くもに して やろう。」
びえーとろは、くもに なりました。
かみなりを おこして、いなぴかりを だし、あめを たきのように ふらせました。
あらしを おこして、やねを ふきとばしたり、へいを こわしたり しました。
「どうだ、わしには かなうまい。わしほ、こんなに つよいんだ。」
ところが、やまの うえの いわだけは、どんなに つよく ぶつかっても、ぴくとも しません。どっしりと すわって いました。
「ああ、なんて つよいんだろう。かみさま、わたしを いわに して ください。」
「よし、いわに して やろう。」
ぴえーとろは、いわに なりました。
もう、おなかも すかないし、のども かわきません。
ちからを いれて、しっかりと がんばって いました。
すると、ある ひの ことです。
ひとりの おとこが やまを のぼって きて、がちんと のみを うちこみました。
ぴえーとろは ぴっくり しました。
「なんと つよい おとこだろう。わたしも こんな おとこに なりたい ものだ。かみさま、どうか おねがいします。」
「ああ、いいとも、いいとも。」
きが つくと、ぴえーとろは、もとの いしやに なって、いつの まにか、じぶんの いえの みせさきに すわって いました。
「うわあ、もとの いしやに なって しまった。いしやが、こんなに えらい ものだとは ゆめにも しらなかった。さあ、しごとだ、しごとだ。」
ぴえーとろは おおよろこびで、こつん こつんと いしを きりはじめました。
(おわり)
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